レシート
美術史を学ぶとはいったい、高校生の時に何があったらその学問を専攻しようと思うのだろうか。
その子に近づいたのは単なる興味本位だった。芸大生、色々な模様が入った派手なズボン、小説、映画。
実際に会う前の彼の中にはくぐもった空気があるように感じた。
そして好きな映画の中に少しだけ闇やエロさが見える。
彼は笑顔の可愛い青年だった。
ラウンド型のメガネがとてもよく似合っていた。
彼とは上野の純喫茶で話した。昭和の匂いがそのまま残る店内。中は薄暗く、オレンジ色の明かりが昼間の空気を独特に変えていく。
まるで、ここだけ時間からぽっかり取り残されているよう。
彼とはセックスの話をした。
私が今までしてきたセックスについて彼はテンポよく聞いた。
彼は日常の中でエロスを見つけるという。
何かをみてそれを感じるのかと思ったら直接感じるらしい。彼はそれを物質を通して感じることができるのだ。
何を言っているのかわからなかった。
例えばどう言うこと?と尋ねると
彼はこう話した。
コンビニでレシートを渡される時あるでしょ?
その時レシートを通して店員さんを感じるの。
レシートになってその店員さんを感じてエロいなと思う。
聞いたところでぱっとこない。
当たり前だ。私は自分の身体を通して感じたことでないとリアルを感じられない。
きっとこうなるであろうと予想できることも実際に自分でやってみて体感しないと納得できないのだ。
彼の事をやはり少し変わっているなと思った。想像力が豊かで感じ方が独特である。
そんな彼を羨ましく思った。
高尚な生き物のよう感じた。
私は単細胞のように一つのことしかわからないが、彼は想像することによってエロスを感じている。
書道とかもすごくエロいですよね。
筆になって、紙にたっぷりと墨を染み込まさる。書くことによって自分の跡が残っていく。
それにとてもエロスをかんじる。
なるほど。それは少しわかる気がする。
筆を指に、紙を肌に入れ替えてみれば、とても繊細でエロティックだ。
23歳の想像力に私は驚く。
日常の中にエロスを感じて見るのはどうだろう。
彼曰く、私はアスリートだそう。
セックスをこよなく愛するアスリート。
そうなると彼はやはりエロスを想像する美術家である。
彼の事をもう少し知ってみたいと思った。
彼とはセックスをするよりもっと話したい。
好みの映画や小説を通してからの感覚を知りたい。
そこからいつか私も少しだけ日常にエロスを感じられるかもしれない。